めずらしいラフウォール

本堂北翼を二階に上がっていただきますと講堂があります。築地本願寺の講堂は創建当初、議場として設計されていました。半円形のすり鉢状で、各種会議、審議を行うための場として機能したのち、現在は講演会や研修会、法話会など、さまざまな行事に利用されています。
講堂は「ラフウォール」と呼ばれる、あえて粗い質感を残した壁が採用されています。モルタルや石膏プラスターの上に、白雲母の粉末を練り混ぜた石膏を塗り、その表面に櫛引きやスポンジ、手ぬぐいなどを駆使して、模様をつけていくものです。採用された経緯は明らかではありませんが、当時流行した建築様式で、カタログや教本にもラフコートやラフウォール、クラフテックスの名前で掲載されています。同時期に建設された庭園美術館などにも見られる様式です。

講堂のラフウォールで特記すべきは、多色に着色されている点です。講堂は長年の雨漏りにより塗膜の剥離や劣化が見られ、補修工事を行いました。膨らんで剥離した部分をいったん剥がし、左官作業で模様をつけ、さらに塗装で着色します。重要文化財の補修は「傷んだ部分だけ最小限とする」のがルールですので、創建当時の色や形と質感をつなぎ合わせなければなりません。ひとつひとつを丁寧に仕上げていく気の遠くなるような作業です。竣工後に予定している講堂の特別公開の折には、どこからどこまでが創建当時の職人によるものか、現代の職人によるものなのかにご注目ください。

また、創建当時のままの多色のラフウォールは講堂のみですが、ほかにも聞法ホール裏会議室や現在の寺務所にも残っています。こちらは後から塗装がされたのか、記録は残っていませんが白色です。部屋ごとに模様も異なっており、創建に関わった職人たちの息吹を感じることができます。時代を超えて受け継がれてきた知恵と技術に思いを巡らせてみてください。まさに温故知新を実践する築地本願寺の工事へのご理解を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。